国内で試験的に交差点記録映像の分析をし、実務への応用について検証しました。
株式会社長大 第1計画部 野尻氏に弊社が自動解析部分を協力する形で、12時間のビデオを目視計測とMT解析の比較をし、精度の検証およびニアミスの計測ならびに過去の事故との比較など、実務においてAIによるビデオ解析が応用可能かの検討を行いました。
なお、この検討については、交通工学研究会の論文に掲載されているので、詳しくはそちらを参照ください。
検討の背景と目的
これまでの事故要因分析や対策の検討手法は、主に事故の過去データ及び路側カメラによるヒヤリハット計測やETC2.0プローブデータなどを活用していた。事故データはその絶対量が多くない事、ETC2.0プローブデータでは交差点内の具体的挙動がよく解らない事、また目視による映像確認では限られた時間しか確認できない等の限界が課題としてあった。
そこでAIを活用したビデオの自動解析によりその課題解決が可能かの検討を目的として実際の解析を行った。
自動解析の精度の検証について
交通量に関する精度
AIによるものと目視による交通量のカウントの比較を行った結果、自動車および自転車の方向別交通量および歩行者の横断交通量ではほとんどさの無い結果となり、十分な精度であることが確認された。
走行速度に関する精度
交差点内を走行する車両の走行速度を、AI自動計測と目視計測の比較により精度検証をした。直進車両40サンプルで比較したところ、速度も十分な精度が確保されていることが検証できた。
ニアミスの計測結果
車両同士のニアミス(PET)では、下り勾配となっている北側からの流入右折車両について、ニアミス時間が短くかつ対向直進車両の走行速度が高い結果となっており、潜在的な事故の危険性が高い結果を示していた。
自動車と自転車歩行者のニアミス挙動(T2)においては、下り勾配となっている北側からの流入左折車両と横断歩道を横断している自転車のニアミスが現れていた。なお、歩行者については、自転車と比べるとニアミスの危険性は現れない結果となった。
人身事故では停止線付近での追突事故が多く、特に北側断面のほうが多い。これは下り勾配で交差点進入速度が高いため、信号変わり目等において、前方車両の急な減速や停車によって追突の可能性が高いことがわかる。また、横断歩道を横断する自転車歩行者との交錯事故も起きており、ニアミス結果との関連も一定程度確認できた。
実務への応用性について
本検討では渋滞発生がなく、自動車の走行性が一定程度確保されている箇所では自動車の右折時における対向直進車とのニアミス、自動車の右左折時における横断自転車歩行者のニアミスにおいて、AI自動計測が有効であることを示せた。また、同手法は、現況分析に加え、対策実施後の早期の効果評価にも活用でき、実務への適用性が高い手法と言える。